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山口一郎さんが伝えた『音楽との向き合い方』(#水溜りボンドANN0 を聴いて)

 

 

 最近オールナイトニッポンを聴いている。Creepy Nutsから始まり、最近は星野源も聞いている。

 オールナイトニッポンは二か月に一度"スペシャルウィーク"という、各番組でゲストを呼ぶ週がある。

 今回、水溜りボンドANN*10にサカナクションの山口一郎さんが登場されるということで初めてちゃんと聴かせていただいた。

 

 結論として、面白かったというよりは ためになった。

 内容のネタバレになるので、まずは先にラジオで聞いてほしい。

(筆が遅く、タイムシフトが切れるまで2時間半となってしまった。水溜りボンドのYouTube公式サブチャンネルで聴ける可能性があるのでそこで聞いてほしい。)

radiko.jp

<追記>こちらです。

www.youtube.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カンタ:ここからは、こんな企画をお届けしたいと思います。山口さん、お願いします。

山口:はい。『山口一郎・音楽カウンセリング』ー!!

~中略~

カンタ:ちょっとこのコーナーの説明をしますね。

 今回山口さんをお呼びするにあたり、27年の人生の中で曲名と曲調をしっかりと認識しているJ-POPがなんと2曲しかない音楽オールドボーイ・トミー君に、おすすめの3曲を紹介していただくコーナーをお届けする予定…だったのですが、山口さんにご提案したところ、

「曲をそんなに知らない人間が本当にいるのか!」

と大層驚かれたそうで、3曲に絞って選ぶよりも、まず音楽に興味がない人間・トミーの話を聞きたいと。・・・まぁ、聞いていただきましたね。

トミー:うん。

カンタ:そこから、音楽を選ぶ作業に入りたいという話になりました。

 なのでここらの時間は、時間が許す限り山口さんとトミーが会話をし、山口さんの私物のPCから、至極の音楽が放出されるカウンセリングコーナーをお届けします。

 

-水溜りボンドANN より一部文字起こし

 

 ということで、上記の通り水溜りボンドのトミーさんは音楽にほとんど興味を惹かれてきませんでした。

 一方カンタさんは音楽がとても好きで、サカナクションのことはカンタさんがトミーさんにライブ映像を見せたことで知ったそうです。

 トミーさんに山口さんがヒアリングしたプライベートな部分は省略し、今回の配信で山口一郎さんがトミーさんを通じて語った『音楽との様々な向き合い方』が非常に面白かったので紹介したいと思います。

 

 

"音楽に興味を持って当然"って考える方が傲慢ですからね

カンタ:音楽に対してトミーはどうなのよ?実際。もうラジオ聞いてる人は知ってると思うけど。山口さん知らないから。

トミー:そうですね。僕はその、いわゆる『皆さんが音楽を聴くタイミングで音楽を聴く意味』があんまり分かんないので。あんま曲を聴かないんですよね普段。聴こうと思って聴かない。

カンタ:iPodとかも持ってなかったですもんね。

トミー:うん。曲を聴くものをあんま持ち歩かないので。

山口 :でも"音楽に興味を持って当然"って考える方が傲慢ですからね。

カンタ:そうですよね。もしかしたら。

山口 :そうそうそう。

カンタ:でも、かなり珍しいケースではあるじゃないですか。多分。今トミー27なので。それまで音楽に触れないのって結構難しい…

山口 :でも、音楽以外の感動がいっぱいあったんじゃないですか?

トミー・カンタ:ああ~!!

トミー:どうなんですかね。たしかに。たしかに…

 

-水溜りボンドANN より一部文字起こし

 

 "NO MUSIC, NO LIFE."という言葉があるほど音楽が身近にある世の中。街を歩けば無意識に耳には何かしらの音楽が入り、通り抜けていく。僕自身も幼少期からいろんな音楽を聴き、そこから好きな音楽をピックアップして聴いている。

 トミーさんは音楽を聴く意味がわからず、興味が湧かなかった。個人的にはカンタさんが言うように『珍しいケース』に感じてしまったが、山口さんはそれに対してこう回答した。

「"音楽に興味を持って当然"って考える方が傲慢ですからね。」

 言われてみればそうである。興味が湧く人もいれば湧かない人だって当然いる。ミュージシャンとして活躍する山口一郎さんがこう言うことは重みが違う。

 このあと、山口一郎さんが音楽に興味をもつきっかけを話したのだが、それも非常に面白かった。

 

山口:僕もね、実は音楽に入る前…音楽が最初じゃなかったんですよ。僕は文学から入ったんですよ。

 小学校の授業で、僕毎日毎日本ばっか読んでて。で、国語の授業で…もうつまり、かったるいわけですよ。ずっと本読んできてるわけだから。同学年の人たちと国語のレベルが違ったんですね。だから生徒のみんなが朗読できなかったりとか、国語のテストで間違えたりとか、授業で変なこと言ったりしてるのに対して、『全然みんな国語わかってないなぁ』みたいな気持ちでいて、ちょっと調子に乗ってたんですよ。

 で、クラスのちょっと勉強が苦手なやつが、「走れメロス」を読んでたんですよ。そんときに全然突っかかって読めなかったんだけども、休み時間に…『光GENJI』ってわかる?

トミー:あー…。

カンタ:わかりますわかります。

山口:光GENJIの「ガラスの十代」っていう歌を、アカペラで歌ってたの。

トミー・カンタ:ああ!

山口:それを聞いて、『あっ、音楽にすると言葉って覚えられるんだ!』とか、

トミー・カンタ:ああ~!

山口:『じゃあ自分が好きな文学をたくさんの人に覚えてもらうには音楽にした方がいいのかな?』って思って音楽に入っていったんですよ。

トミー・カンタ:ええー!

トミー:なるほど!ふっか!深い話!

山口:だからみんな「好きだ」って言ってるものに対して『僕も聴こう』っていって音楽を聴き始めたタイプじゃないから、

カンタ:別なんですね。

山口:だからトミー君の気持ちもわかる。

 

-水溜りボンドANN より一部文字起こし

 

 この話は初耳だったので驚いた部分が多分にあるが、山口一郎さんが音楽を様々な試みを通じて発信している*2ことを思い出し、そのルーツを知った気がした。

 

 

音楽っていうのは、匂いと一緒なんですよ

山口:音楽っていうのは、目で見えなくて、手でも触れないじゃないですか。ってことは匂いと一緒なんですよ。

トミー・カンタ:おおー。

山口:匂いと音楽って一緒で、要するに"気分をコントロールするもの"なんですよ。

トミー:うんうん。

山口:例えば何もない空間でじーっと立ってて、ジャズが流れたらムーディーな場所に感じたりするじゃないですか。

トミー:なるほどなるほど。

山口:けどそこで演歌が流れたらちょっと日本の下町みたいな感じになるじゃないですか。気分が変わるじゃないですか。

トミー:はい。

山口:匂いも、ラベンダーの香りが漂ったらなんか少し清潔感ある感じがするし、餃子の匂いがしたら『なんか近くに料理屋さんがあるのかな』みたいな感じになるじゃないですか。だから匂いと音楽って似てる思うんですよ。

 

-水溜りボンドANN より一部文字起こし

 

自分を自分らしくしてくれるのが音楽だから

山口:音楽を選ぶときに『音楽によって自分をどんな気分にしたいか』、っていうコントロールをするために音楽を聴くっていう方法が一個。

カンタ:気分を上げるためとか。逆に『これを聴いたらテンションが上がるからこれにしよう』とか。

山口:そう。悲しいときに明るい気分に変えたいときもあるけど、悲しいときにより悲しくなりたいときもあるじゃん。

トミー:たしかに。浸りたい、じゃないですけど…

山口:そういう時に音楽の力借りようよ!

カンタ:あぁー!

トミー:なるほど!

カンタ:音楽すげぇ!

山口:自分を自分らしくしてくれるのが音楽だから!

~中略~

山口:道具だから!ある種、そういう意味では。そう使っていいわけだから。世の中にはいろんな音楽があるわけだから。

トミー:たしかに。

~中略~

カンタ:好きな曲を探すって変な話ですもんね。

山口:そうそうそう。だから…街を歩いてれば音楽が流れてるわけですよ。いろんな音楽が。その音楽に寄り添うか寄り添わないかってだけだから。引っ張られるか引っ張られないかってだけで。トミー君は音楽に引っ張られないんですよ。

 

-水溜りボンドANN より一部文字起こし

 

山口:自分の気持ちをより強固にしてくれるのも音楽だし、自分の気持ちを大きく変えてくれるものも音楽の力なの。

 それを作ってるのが我々ミュージシャンだから!

トミー・カンタ:すげーーー!!!!

カンタ:サカナクションすげぇ!!

山口:そうそうそう。

トミー:かっこよすぎる!!

山口:そうそうそう(笑)

カンタ:その仕事なんですね!

山口:それが僕らの仕事だから!

 

~中略~

山口:どう?これで音楽の聴き方ちょっと分かりました?

トミー:はい!そうですね。はい。だから『流行ってるから聴こう』とかそういうことじゃないんですね。

山口:そうじゃない。(後略)

カンタ:自分に合う曲がこう、入ってきて好きになっていく。

山口:そう。で、そういうのをたくさん出会いたいと思う人は自分で掘るし、そうじゃなくてたまたま出会う…要するに事故みたいなもので感動したってい人はそれでいいわけ。だからトミー君はそういうタイプなの。たまたま会ったものに惹かれていけばいいと思うし、僕が今日ゲストに来たことで、今かけた曲ね?クラムボンの「コントラスト」って曲だけど、この曲がなんかこう、ちょっと悲しい時に聴きたいって思うかもしれないじゃない。

トミー:そうですね。

山口:出会ったんですよ!

カンタ:あ、今日出会ったってことですもんね?

トミー:これに関しては、ガチで出会いましたね!

カンタ:すごいなぁ…

山口:そうそうそうそう。

カンタ:このカウンセリング、すごいっすね…。

山口:そうでしょ?

 

-水溜りボンドANN より一部文字起こし

 

 『音楽を聴く』という動作でも、その意図は人それぞれである。自分の感情をサポートするサポーターとして、逆に感情を無理やり変える薬として、ただ静寂を消す音として。

 その道具として音楽を聴く人は、道具をこだわるように様々な音楽から自分に合うものを探すために山ほどある音楽を聴き、吟味する。最終的に自分に合った道具を相棒とし、愛用する。

 トミーさんにとってこの道具は必要ではなく、こだわる必要がなかったのだろう。

 山口さんが"道具"と比喩したことで、トミーさんにとっての音楽の存在意義がとてもつかみやすくなったのではなかろうか。

 

音楽が好きだっていうことが当たり前だって思っちゃいけない

カンタ:メール読みましょうか。RN.マタタビ

「山口さん、音楽を知らない人間との会話はいかがでしたか。

 逆に何か気づきがあったら教えてください。」

山口:だからみんなもね、トミー君を攻めすぎだよ。

 音楽が好きだっていうことが当たり前だって思っちゃいけない。音楽に興味がない人もたくさんいるわけ。それを攻撃するんじゃなくて、音楽が好きじゃない人にどうやったら音楽を好きになってもらえるんだろうっていう風に考えてアクションしていくことが大事だね。

トミー:あーありがたい…。ありがたいけど、俺は今まで何をやってたんだ!!マジで!

カンタ:その人、今こんなにやさしくしてくれてる人がやってる職業あんま知らんかったって(笑)

トミー:それおかしいよ!

山口:(笑)。でも出会ったからね。

トミー:そうですね。

カンタ:そうですね。いい出会いだ!

トミー:たしかに、逆に言ったら俺らが『YouTuber知らんわ』って言ってる人だとして、「いや今流行ってるのに知らないのおかしいでしょ」っていうスタンスは絶対におかしいってことですね。それは。俺らもそれは違うだろってことだからね。伝え方みたいなのはね。

 

-水溜りボンドANN より一部文字起こし

 

 最初から一貫して言い続けたのは「音楽に興味がない人だっている」ということ。

トミーさん自身もネタにしつつも、『音楽は興味を持つもの』という雰囲気が蔓延する世間に居心地の悪さもあったと語った。

 山口さんは自身の経験をもとに「自分はこういうきっかけでたまたま音楽に興味を持った」と語り、興味を持てないトミーさんを肯定した。

 僕自身無意識にトミーさんの音楽への無関心さを異常だと思っていたことを恥ずかしく感じた。

 この思考が、トミーさんのような方の居場所を奪っていたと考えると非常に申し訳なく思った。僕自身も天邪鬼な部分があるのでより共感した。

 トミーさんも自身が活動拠点とするYouTuberに置き換え、俯瞰ではなく主観で捉えようとする発言をし、改めてトミーさんの頭の柔らかさと回転の速さに感心した。

 

感想

 めちゃめちゃためになった。馬鹿みたいな感想になるが一言でいえばこれに尽きる。

 カウンセリングとしても①相手の思考を訊き②相手の思考を理解したうえで肯定し③相手が対応できる範囲内で目標達成の案を出す という流れを丁寧かつスピーディーに実行し、3曲紹介して無事3曲目でトミーさんが音楽に興味をもつという完璧な任務遂行をしており、山口さんの頭の良さを痛感した。

 思えば僕自身も流行に乗れない天邪鬼な部分があり、自分の主観で見ると『流行ってるけど興味が湧かない』部分は山ほどある。一方で逆に相手が興味を持っていないものを無理に薦めてしまったこともある。今後人に薦めるときにはこの話を思い出していきたい。

 

 

1.以心電信-You've Got To Help Yourself-/クラムボン

www.youtube.com

 

2.Monkey Magicゴダイゴ

www.youtube.com

 

3.コントラスト/クラムボン

www.youtube.com

 

4.忘れられないの/サカナクション

www.youtube.com

 

 

 <おまけ>ぶっちゃけ、あんまり興味なかったでしょ?

 この記事を書くにあたり、最初に文字起こししたものの、本編には使わなかったので、でも文字起こししてしまったのでここに供養する。

 

山口:でもぶっちゃけ、あんまり興味なかったでしょ?

カンタ:ぶっちゃけ訊きましょう!これは訊きましょう!

トミー: いや…早くないですか?

山口:別にその、僕のことを知ってる知らないとか、サカナクションの曲好き嫌いとか、そんなことは全然どうでもいいんです、今日初対面ですし。

 で、音楽にさほど興味がないってこともいろいろ噂に聞いていたので。

トミー:そうですね。

山口:別にこういう場だからって「いやーすごかったですよ!ライブの映像見て!」とか、「サカナクションの曲好きですよ!」とかって、あんまり言わないでほしいなというか。ちゃんと本音で話さないとやっぱり距離が縮まらないから!

カンタ:じゃあもう今日はそういうの無しで!ちゃんと話すことにしましょう!

山口:しっかり!しっかりいこう!

トミー:ちょっと大丈夫かな・・・

カンタ:裸のトミーの状態で戦うしかない。

トミー:いや戦えないだろ!

 

-水溜りボンドANN より一部文字起こし

*1:オールナイトニッポンの略

*2:サカナクションのNFパンチ(スペースシャワーTV)や、シュガー・シュガー(NHK)などで、音楽の枠を超えた活動をしている。